搭乗者傷害・人身傷害
傷害保険の場合、被保険者によって必要な補償額が異なってきますが、ここでは被保険者が32歳の男性で被扶養者が有、死亡した場合の総損害額が8000万円、介護を必要とする重度の後遺障害(両眼の失明や両足の切断など)を負った場合の総損害額が1億4000万円とした場合について見てみましょう。
事故例1 相手が過失100%の場合
相手側から総損害額(被保険者が死亡した場合は8000万円、介護を必要とする重度の後遺障害を負った場合は1億4000万円)が支払われます。
万一相手が無保険車の場合は、自賠責保険の保険金(死亡保険金3000万円、後遺障害保険金4000万円〜75万円)など相手から支払可能な損害賠償金を受け取り、相手から支払われた損害賠償金額を総損害額から差し引いた金額が自分が加入している無保険車傷害保険から支払われます。
搭乗者傷害保険は、加害者からの賠償金やその他の保険金等とは関係なく、重ねて保険金が支払われます。
無保険車事故の場合で、人身傷害補償保険が付保されている場合は、人身傷害補償保険で補償されない、または損害額が人身傷害の補償金額を超過する場合にのみ無保険車傷害保険が適用されます。
事故例2 過失割合が自分30%、相手70%の場合
相手から総損害額の相手過失分70%が損害賠償金(死亡の場合5600万円、介護を必要とする重度後遺障害の場合9800万円)として支払われます。
万一相手が無保険車で、支払われる損害賠償金が総損害額の相手過失分70%に満たないときは、自分が加入している無保険車傷害保険で不足分が支払われます。
従って、いずれの場合も自己負担分に当たる総損害額の自分の過失分30%(死亡の場合2400万円、介護を必要とする重度後遺障害の場合4200万円)は搭乗者傷害保険と人身傷害補償保険での補償が必要になります。
自損事故保険は適用されません。
事故例3 過失割合が自分90%、相手10%の場合
相手から総損害額の相手過失分10%が損害賠償金(死亡の場合800万円、介護を必要とする重度後遺障害の場合1400万円)として支払われます
万一相手が無保険車で、支払われる損害賠償金が総損害額の相手過失分10%に満たないときは、自分が加入している無保険車傷害保険で不足分が支払われます。
従って、いずれの場合も自己負担分に当たる総損害額の自分の過失分90%(死亡の場合7200万円、介護を必要とする重度後遺障害の場合1億2600万円)は搭乗者傷害保険と人身傷害補償保険での補償が必要になります。
自損事故保険は適用されません。
事故例4 自損事故(自分が過失100%)の場合
自損事故の場合は、人身傷害に未加入の場合は自損事故保険が自動的に付保されますが、人身傷害に加入している場合は自損事故保険は付帯されないという違いがありますので、それぞれの場合に分けて見てみましょう。
人身傷害補償保険に未加入の場合
人身傷害に未加入の場合は自損事故保険が自動的に付保されていますので、まず、自損事故保険の保険金(死亡の場合死亡保険金1500万円、介護を必要とする重度後遺障害の場合重度後遺障害保険金1500万円と介護費用保険金350万円、医療保険金は100万円が限度)が支払われます。
もちろん無保険車傷害保険は適用されませんし、人身傷害補償保険には未加入ですから、損害額の残り(死亡の場合6500万円、介護を要する重度後遺障害の場合1億2150万円)を搭乗者傷害保険での補償を担保する必要があります。
ところが、搭乗者傷害保険は本来、事故時のケガを補償することを主な目的として作られた保険で、現在どこの保険会社も引き受け保険金額の限度額を1000万円〜2000万円としています。
例えば搭乗者傷害保険に最高額2000万円で加入したとしましょう。この場合、死亡して最大限の保険金2570万円(死亡保険金2000万円、シートベルト装着者特別保険金300万円、死亡に至るまでの医療保険金270万円)を受け取った場合でも3970万円不足し、介護を要する重度後遺障害を負って最大限の保険金2870万円(後遺障害保険金2000万円、重度後遺障害特別保険金100万円、重度後遺障害介護費用保険金500万円、後遺障害に至るまでの医療保険金270万円)を受け取った場合では9280万円も不足することになります。
傷害や介護を必要としない後遺障害の場合であっても、特に治療が長期になる場合など、自損事故保険と搭乗者傷害保険の補償だけでは不足することが少なくありません。
以上のことをふまえると、やはり人身傷害補償保険への加入を検討するのが望ましいと言えます。
人身傷害補償保険に加入している場合
人身傷害に加入している場合は自損事故保険は付帯されていませんし、無保険車傷害保険も適用されません。
したがって、搭乗者傷害保険と人身傷害補償保険で総損害額(死亡の場合8000万円、介護を必要とする重度後遺障害の場合1億4000万円)を補償する必要があります。
前述したように搭乗者傷害保険だけで全額担保することはできないので、搭乗者傷害保険と人身傷害補償保険の併用で担保するか、人身傷害補償保険だけで担保するか、どちらかを選択することになります。
人身傷害補償保険で支払われる保険金は、保険会社が定められた基準(任意保険基準)に基づいて算定した総損害額ですが、ここで言う任意保険基準とは、自賠責保険の基準(自賠責保険基準)に若干の上乗せをした金額になっています。自賠責保険は、被害者に対して「最低限の」補償をするための保険ですから補償金額は低く設定されています。ですから、人身傷害補償保険で支払われる保険金が十分だとは必ずしもいえません。したがって、人身傷害補償保険で多少不足する分を搭乗者傷害保険で補うという考えで、搭乗者傷害保険と人身傷害補償保険の併用で加入するのが最適な保険選びと言えます。
人身傷害補償保険では、介護を必要とする重度後遺障害の場合は、契約金額の2倍を限度(ただし、2億円を限度)に支払われることになっています。
搭乗者傷害・人身傷害の保険金額は・・・
以上のことを総合的に考えると、今回のケースでは搭乗者傷害保険に500万円〜1000万円、人身傷害補償保険に7000万円〜8000万円ぐらいで加入するのが妥当だと思われます。
もちろん、被保険者の年齢、収入、扶養家族によって総損害額が変わってきますし、人身傷害の保険金額による保険料の差は対人賠償や対物賠償に比べて若干大きいですので、どうしても保険料を安くしたい場合には多少の減額もやむを得ないでしょう。
しかしそのような場合でも、いざというときに必要な補償額に全然満たないということのないよう、十分配慮して保険金額を設定するべきでしょう。
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